【保存版】SUMIF・SUMIFS関数を経理実務でマスターする──勘定科目別・部門別・期間別の集計を一気に自動化
「勘定科目ごとに合計を出したい」「営業部の経費だけ足したい」「今月分だけ集計したい」──経理の現場で毎日のように出てくるこの作業、じつは SUMIF と SUMIFS のたった2つの関数でほぼ片づきます。この記事では、実際の経費データを使いながら、基本構文から実務で効く応用パターン、つまずきやすい落とし穴まで、例を豊富にそろえて解説します。手を動かしながら読めば、電卓とフィルターの手作業から卒業できます。
1. まずは結論:SUMIFとSUMIFSの違い
細かい話に入る前に、いちばん大事な違いだけ先にお伝えします。
| 関数 | 条件の数 | こんなときに使う |
|---|---|---|
| SUMIF | 1つ | 「旅費交通費」だけの合計、など単一条件 |
| SUMIFS | 1つ〜複数 | 「営業部かつ旅費交通費」など複数条件。条件1つでも使える |
迷ったら 最初からSUMIFSを使うのがおすすめです。SUMIFSは条件が1つでも使えるうえ、あとから「部門でも絞りたい」となったときに条件を足すだけで済みます。SUMIFとSUMIFSは引数の順番が違うので、途中で書き換えるのは地味に面倒。最初からSUMIFSで統一しておくと、書き換え事故を防げます。
とはいえSUMIFの仕組みを理解しておくと、SUMIFSの理解も一気にラクになります。まずはSUMIFから順に見ていきましょう。
2. この記事で使うサンプルデータ
以下の「経費データ」を使って解説します。A列〜E列、2行目〜11行目にデータが入っている前提です。ご自身のExcelに写して、一緒に手を動かしてみてください。
| 行 | A:日付 | B:部門 | C:勘定科目 | D:摘要 | E:金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 2026/4/1 | 営業部 | 旅費交通費 | タクシー代 | 3,200 |
| 3 | 2026/4/3 | 経理部 | 消耗品費 | コピー用紙 | 1,800 |
| 4 | 2026/4/5 | 営業部 | 接待交際費 | 取引先との会食 | 15,000 |
| 5 | 2026/4/8 | 総務部 | 通信費 | 携帯電話料金 | 8,500 |
| 6 | 2026/4/10 | 営業部 | 旅費交通費 | 新幹線(出張) | 24,000 |
| 7 | 2026/4/12 | 経理部 | 消耗品費 | 文房具 | 2,400 |
| 8 | 2026/4/15 | 総務部 | 接待交際費 | 手土産 | 5,000 |
| 9 | 2026/4/18 | 営業部 | 通信費 | クラウド利用料 | 12,000 |
| 10 | 2026/4/22 | 経理部 | 旅費交通費 | 電車代 | 1,320 |
| 11 | 2026/4/25 | 総務部 | 消耗品費 | 電池 | 980 |
3. SUMIF関数の基本(1つの条件で集計)
SUMIFは「ある条件に合う行の金額だけを合計する」関数です。構文はこうです。
3つの引数の意味を、日本語に置き換えるとこうなります。
| 引数 | 意味 |
|---|---|
| 範囲 | 条件を探しにいく列(例:勘定科目の列) |
| 検索条件 | 探したい中身(例:”旅費交通費”) |
| [合計範囲] | 実際に足したい列(例:金額の列)。省略すると「範囲」がそのまま合計されます |
言葉にすると「C列(範囲)から “旅費交通費”(検索条件)を探して、その行のE列(合計範囲)を足す」という流れです。実際に書いてみましょう。
=SUMIF(C2:C11, “旅費交通費”, E2:E11)
// → 結果:28,520
3,200(タクシー)+24,000(新幹線)+1,320(電車)= 28,520円。フィルターで絞って電卓を叩く作業が、数式ひとつで終わりました。
条件を “旅費交通費” と直接書く代わりに、どこかのセル(例:G2)に「旅費交通費」と入力しておき、=SUMIF(C2:C11, G2, E2:E11) と書けます。集計表を作るときは、この「セル参照」方式が断然ラク。G列に科目名を並べておけば、下方向にコピーするだけで科目別集計表が完成します。
4. SUMIFの実務例(勘定科目・部門・金額・ワイルドカード)
SUMIFは「検索条件」の書き方を変えるだけで、いろいろな絞り込みができます。経理でよく使うパターンを4つ紹介します。
例1:部門別に合計する
=SUMIF(B2:B11, “営業部”, E2:E11)
// → 3,200 + 15,000 + 24,000 + 12,000 = 54,200
例2:金額で絞り込む(比較演算子)
数値の条件は、比較演算子をダブルクォーテーションで囲んで書きます。
=SUMIF(E2:E11, “>=10000”)
// → 15,000 + 24,000 + 12,000 = 51,000
このように、探す列と足す列が同じ(金額の列で条件を判定して、金額を足す)場合は、3つ目の「合計範囲」を省略できます。
| 条件の書き方 | 意味 |
|---|---|
| “>=10000” | 10,000以上 |
| “<5000” | 5,000未満 |
| “<>0” | 0以外 |
| “5000” | ちょうど5,000 |
例3:摘要の「部分一致」で拾う(ワイルドカード)
「摘要に “電話” という文字を含む行」のように、あいまい検索をしたいときはワイルドカードを使います。
| 記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| * | 任意の文字(0文字以上) | “*電話*” → 電話を含む |
| ? | 任意の1文字 | “A?” → Aで始まる2文字 |
=SUMIF(D2:D11, “*電話*”, E2:E11)
// → 携帯電話料金の 8,500 だけがヒット
例4:科目別集計表を一気に作る
G列に科目名を並べ、H列にSUMIFを1つ作って下へコピーすれば、集計表の完成です。合計範囲・検索範囲は「$」で固定するのがコツ(絶対参照)。
=SUMIF($C$2:$C$11, G2, $E$2:$E$11)
科目別集計表を作ったら、その合計(SUMIFの縦計)と、元データ全体のSUM(=SUM(E2:E11)=74,200)が一致するか必ず確認しましょう。ズレていたら、拾い漏れ(表記ゆれ)か二重計上のサインです。「集計表の縦計=元表の総合計」は、経理の検算の基本動作です。
5. SUMIFS関数の基本(複数の条件で集計)
SUMIFSは「複数の条件をすべて満たす行だけ」を合計します。構文はこうです。
SUMIFは 「範囲 → 条件 → 合計範囲」の順。
SUMIFSは 「合計範囲 → 条件範囲 → 条件」の順で、合計する列を必ず先頭に書きます。
ここを取り違えると結果がおかしくなります。「SUMIFSは足す列が先頭」とだけ覚えておけば大丈夫です。
先ほどの「営業部かつ旅費交通費」を出してみましょう。
=SUMIFS(E2:E11, B2:B11, “営業部”, C2:C11, “旅費交通費”)
// → 3,200(タクシー)+ 24,000(新幹線)= 27,200
条件は「AND(かつ)」で結ばれます。追加したい条件があれば、「条件範囲, 条件」のペアを後ろに足していくだけ。理屈はこれで全部です。
6. SUMIFSの実務例(部門×科目・期間指定など)
例1:期間で絞る(日付範囲=経理の必須技)
「4/10〜4/20の経費だけ」のように期間を絞るのは、SUMIFSの独壇場です。開始日以上(>=)と終了日以下(<=)の2条件を、同じ日付列に対して指定します。
=SUMIFS(E2:E11, A2:A11, “>=”&DATE(2026,4,10), A2:A11, “<=”&DATE(2026,4,20))
// → 24,000 + 2,400 + 5,000 + 12,000 = 43,400
比較演算子と日付をくっつけるときは、“>=”&DATE(2026,4,10) のように 「演算子(文字列)」&「日付の値」という形にします。“>=2026/4/10” と直接書くと、環境によっては文字列扱いされて拾えないことがあるので、DATE関数か「日付を入れたセルの参照」を使うのが安全です。
例2:部門×科目のクロス集計表を作る
条件をすべてセル参照にしておくと、部門を横・科目を縦に並べたクロス集計表が、1つの数式のコピーだけで完成します。
=SUMIFS($E$2:$E$11, $C$2:$C$11, $G2, $B$2:$B$11, H$1)
ポイントは複合参照。科目は「列だけ固定($G2)」、部門は「行だけ固定(H$1)」にすると、右にも下にもコピーできる万能な1本になります。
例3:文字条件+数値条件の合わせ技
=SUMIFS(E2:E11, B2:B11, “営業部”, E2:E11, “>=10000”)
// → 15,000 + 24,000 + 12,000 = 51,000
このように、合計する列(E列)を条件範囲としても指定できます。「金額が◯◯以上のものだけを合計」という、経理でありがちな抽出がこれ1本で片づきます。
7. つまずきやすい落とし穴とエラー対処
もっとも多いミス。SUMIFは「範囲・条件・合計範囲」、SUMIFSは「合計範囲・条件範囲・条件」。SUMIFSは足す列が先頭と覚えておくこと。
合計範囲と条件範囲の行数(大きさ)は必ず一致させます。片方が E2:E11、もう片方が B2:B12 のようにズレていると #VALUE! になります。範囲は列全体(E:E, B:B)で揃えるか、同じ行番号で切りそろえましょう。
「営業部」と「営業部 」(末尾に空白)、「旅費交通費」と「旅費交通 費」(途中に空白)、全角と半角の混在。見た目は同じでも、Excelは別物として扱うので拾い漏れます。集計が合わないときは、まず表記ゆれを疑ってください。TRIM関数やデータの入力規則で、元データを揃えておくのが根本対策です。
他システムからの貼り付けデータでありがち。金額が左寄せ(=文字列)だと、合計に含まれず 0 が返ることがあります。セルの左上に緑の三角マークが出ていたら要注意。「区切り位置」機能や VALUE関数 で数値に直しましょう。
比較演算子とセル参照を組み合わせるときは、&で連結が必須。誤 “>=A1”(A1という文字を探しにいく)/正 “>=”&A1。次章で詳しく扱います。
8. 一歩進んだ応用テクニック
応用1:条件を「セルの値以上」にする(可変のしきい値)
「G1セルに入れた金額以上を合計」のように、条件をセルで動かしたいときの書き方です。
=SUMIF(E2:E11, “>=”&G1)
応用2:OR条件(どちらか)は足し算で表す
SUMIFSの条件は「AND(かつ)」でつながります。「営業部 または 経理部」のようなOR条件は、SUMIFを足し算して作るのが基本です。
=SUMIF(B2:B11,”営業部”,E2:E11) + SUMIF(B2:B11,”経理部”,E2:E11)
応用3:SUMIFS と ピボットテーブルの使い分け
| 場面 | 向いている道具 |
|---|---|
| 決まったレイアウトの帳票に、特定の数字を差し込みたい | SUMIFS |
| データを色々な切り口でざっと眺めたい・探索したい | ピボットテーブル |
| 元データが更新されても、数式は自動で追随してほしい | SUMIFS |
ざっくり言えば、「決まった様式に数字を埋める」ならSUMIFS、「自由に集計して眺める」ならピボット。両方使えると経理の作業は一段速くなります。
OR条件が複雑になったり、SUMIFSでは書きにくい集計に出会ったら SUMPRODUCT という関数もあります。ただし最初のうちは「AND条件はSUMIFS、OR条件はSUMIFの足し算」で十分カバーできます。まずはこの2つを確実に。
9. 経理マンの一言
SUMIF・SUMIFSは、経理にとって電卓の次に手が伸びる関数です。私自身、月次の科目別集計も、部門別の経費チェックも、支払サイト別の残高確認も、ほぼこの2本で回しています。だからこそ、最後に3つだけ現場の本音をお伝えします。
1つめ。「合計が合わない」ときは、関数を疑う前に元データを疑う。 SUMIFSが間違った計算をすることは、まずありません。合わないときの犯人は、たいてい表記ゆれ(末尾の空白、全角半角)か、文字列として入った数値です。関数を書き直す前に、元データを整えるクセをつけてください。回り道に見えて、これがいちばんの近道です。
2つめ。端数処理は集計とは別問題。 消費税の絡む金額を集計するときは、「1件ごとに端数処理されているか」「合計してから丸めるのか」で数円ずれることがあります。SUMIFSは足すだけで、丸めはしてくれません。丸めの責任は自分にある——これは覚えておいて損はありません(このあたりはROUND関数の記事で詳しく書きます)。
3つめ。集計表を作ったら、必ず総合計と突き合わせる。 科目別・部門別に分解した数字の縦計が、元表の総合計とピタリ一致するか。この一手間が、拾い漏れと二重計上を防ぐ最後の砦です。数字を作る人ほど、最後は人の目で検算する。これは関数がどれだけ賢くなっても変わらない、経理の作法だと思っています。
10. コーチと生徒のQ&A
11. まとめ
- SUMIF=1条件で合計。順番は「範囲・条件・合計範囲」
- SUMIFS=複数条件で合計。順番は「合計範囲・条件範囲・条件」(足す列が先頭)
- 迷ったら最初からSUMIFSで統一すると事故が減る
- 数値条件は “>=10000”、日付は “>=”&DATE(…)、セル参照は “>=”&A1
- 部分一致は * と ? のワイルドカード
- 合計が合わないときは、まず表記ゆれ・文字列数値を疑う
- 集計表の縦計は、必ず元表の総合計と突き合わせて検算する
SUMIFとSUMIFSは、覚える理屈は少ないのに、経理の作業時間をいちばん削ってくれる関数です。まずは今日のサンプルデータを写して、勘定科目別の集計を1本書いてみてください。手が覚えれば、あとは応用が効きます。
次は、条件付きで「件数」を数える COUNTIF / COUNTIFS や、端数処理の ROUND 系とあわせて使うと、集計の精度がさらに上がります。あわせて読んでみてください。
※本記事の数式は Microsoft 365/Excel 2016 以降で動作を確認しています。SUMIF・SUMIFSは長年仕様が安定している関数ですが、お使いのバージョンによって細部の挙動が異なる場合があります。


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